会長のことば 2018年10月版

 

指導者(リーダー)の皆さんへ ~本当の やさしさ とは~

今年の夏は西日本を中心とする大雨、史上最強クラスの台風(21)さらには大阪北海道を襲った大地震など、自然が猛威を振るいました。そんな夏が終わりを告げると、いつもと変わらぬ爽やかな風と豊かな自然の恵みを運んでくれる秋が訪れ、何とも、自然の偉大さと私たち人間の儚さを感じずにはおれません。2018年も残すところ3ヵ月となり、色々な事柄が大詰めを迎えています。私たちも年に一度の合同行事である錬聖会大会を来る114()に開催します。今回で14回目となるこの大会は、傘下の各道場・支部が一堂に会し、相互に成長を確かめ合うとともに、同門生間の親交を図るものです。「競技会」 と 「演武会」を毎年、交互に行っており、今年は 「競技会(形試合・組手試合)」 を開催しますので、日ごろの修練の成果をいかんなく発揮していただきたいと思います。 

 

 話は変わりますが、最近、とくに指導者(リーダー)の皆さんに気をつけてほしいことを少し書いてみます。 

世間では現在、スポーツ界などのパワハラ問題がマスコミによって喧伝され、ややすると 「厳しいことが 」 であり、他人のすることに口出しをせず、耳障りの良いことを言うことが として扱われる風潮が蔓延しているようです。

 

しかし、もし学校の先生が生徒の顔色をみて厳格な指導を出来なくなったら学校の秩序は保てなくなるでしょうし、企業でもまた、目標達成に向けて厳しさを求められなくなったとしたら、熾烈なグローバル競争に勝てず破綻するでしょう

 

要は、目的に向かって目標を達成するためには、「厳しさは必須」 であることを再認識すべきだということです。

 

努々、無責任なマスコミの扇動に乗らないように注意してほしいのです。

 

「ヒトは易きに流れる(※1)」 うえ、「悪貨は良貨を駆逐する(※2)」 ことが世の常であることを念頭において、組織(道場)運営にあたってください。空手では、“負荷 をかけ続けることにより、それに耐えうる心身を作り上げることが修練の基本です。通常、ヒトは負荷を避けようとするものであり、強い意志をもって修練に臨まないかぎり継続は難しい。だから、道場という統制された場で修行するのです。その道場に 「もうやめれば?」、「適当で良いよ!」 といった甘言(悪貨)が流されたとしたら、たちまち道場全体に広がり、士気が下がってしまうということです。繰り返しになりますが、現在、世間では、上述の甘言を流すヒトが で、辛くてもやり通そうと厳しく指導するヒトが といった論調がありますが、これはヒトを、組織を、しいては国家を弱体化するものであり、指導者としては強い意志をもってこの論理を排除し、固い信念をもって厳しい指導を貫いてください。そのための道場なのですから。

 

 最後に指導者としての行動について申し添えます。もし、皆さんの組織に 「悪貨(甘言を流すヒト)」 の存在が発覚したなら、その悪貨が良貨を駆逐する前に、躊躇なく悪貨を放出することが大切です。嫌がる悪貨(ヒト)を無理やり引き止め、嫌がる負荷をかけ続けるから人間関係が破綻し、思わぬ問題(パワハラ告発など)に発展するのです。特に空手の修練は、上位に行くほど負荷が大きくなりますので、不適性なヒトが発生するのは当然です。その場合は、修練の負荷をコントロール(抑制)してあげるか、それができなければ、当人の適性に合った他のスポーツなどに移行するよう指導してあげる対応が必要です。それが 本当のやさしさ でしょう。

 

 錬聖会は、会員の皆さんの健康と成長を目指した厳しさを追求します。そして、その厳しさを理解し、尊重しあえる「ヒト と ヒトとのコミュニケーション」 を大切にします。そこには 上面の ニセモノのやさしさ ” は存在しません。

 あるのは、“本当のやさしさ だけです。

 そんな、本当のやさしさをもった ヒト たちが集まる、114日の錬聖会大会がとても楽しみです。 

 

 

   ※1ヒトは易きに流れる : 水が自然と低いほうに流れることが自然の摂理であるように、人は安易な方を選択するものだ。 

   ※2悪貨は良貨を駆逐する : http://kotowaza-allguide.com/a/akkawaryouka.html (故事ことわざ辞典)

 

                                   日本空手道錬聖会

                                    会長  森 拓生

 

) 上述のコメントは、現在問題化している各ハラスメント事案の当事者たちを擁護したり、 

   その行為を肯定するものではありません。

 

会長のことば2018年10月版
会長の言葉(2018.10.1) 改.pdf
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