“強い組織”とは
新しい年度も3ヵ月が経過し、新入生や新入社員たちも新しい生活に馴染んでこられたことと思います。錬聖会の支部として活動している大阪府立大学空手道部にも6名の新入部員が入り(6/末現在)、久々に活気溢れる練習の日々を送っています。また、神田に道場をおく東京支部でも、4月以降に5名の新しい仲間が加わり、それまで使用していた練習会場が手狭になるという状況になっています。このように、空手が正式種目となる東京オリンピックという新しい息吹が、徐々にではありますが確実に広がっています。各道場・各支部においてもこの追い風をテコにして、さらに活動の輪を広げていただければと願います。
さて、皆さんは日頃、錬聖会のいずれかの道場または支部に属して練習しています。そこには先輩・後輩あるいは同僚(友達)などいろいろな関係の人たちが集まり、また、年齢も、空手の技の習得度も様々です。しかし、そんな多様な人たちの集団であっても、組織的に行う練習は、独りでする練習よりもずっと楽しいし、練習成果も上がることは、皆さんも経験済みだと思います。それは各道場の先生方の指導があることは勿論ですが、それだけではありません。人が集まる「組織」には、目に見えない不思議な力があるのです。そして、組織の力を高めることで、個人もまた強くなるという相乗効果(個人と組織が高めあう効果)があるのです。
では、そういった相乗効果をより多く引き出す“強い組織”の条件とは何か・・・、私の経験から3つのポイントを申し上げます。
1.組織(各道場・支部)が同じ “目的・目標・課題” を共有していること
・目的とは「若者の成長する場であること」など、組織の目指すべき方向性を意味します。
・目標とは、今年は○○大会で団体優勝するぞ/全員参加で夏合宿をやるぞ 等、目的に
向かう具体的な過程のひとつです。
・課題とは、その目標を達成するために実施する具体的な取組テーマを指します。
2.組織のなかで “偉さ” が多様化し、お互いに認め合っていること
・大会で優勝した人も偉い、毎回休まずに練習に参加している人も偉い、後輩に教える
のが上手な人も偉い
・・・“偉さ”は本当にいろいろあります。仲間がそれぞれ持っている“偉さ”を認め
合うことが大切です。
・もちろん、競技空手の大会で良い成績を挙げた人は偉いですが、それがすべてで
あってはいけません。
空手道とは、技の習得や厳しい鍛錬の積み重ねなどが人格にまで高められ、人生に
おいて何事にも動じない不屈の精神と肉体を生涯を通して追い求めて行くものです。
その過程で様々な“偉さ”を身につけることでしょう。
3.“良いリーダー”がいること
・上記1.と2.をよく理解したリーダーは、組織全体の士気を高めることができます。
・良いリーダーとは、「良い社会人(社会のルールを守ります)」、「良い空手選手(練習
を通じて自分自身を高めます)」、「良い先輩(後輩の成長を暖かく見守ります)」など
のプロセスを経て完成されます。
・競技空手の大会で勝ちさえすれば、社会のルールやマナーなど守らなくても良いんだ、
といった考えの人は良いリーダーになれないばかりか、空手選手を名乗ることも許され
ません。
空手は個人競技のように言われることがありますが、私たちがより大きく成長するためには、組織が健全で、活気があることが重要です。ぜひ、一致協力して 強い組織づくり を進めてください。
2016年7月1日
日本空手道錬聖会 会長 森 拓生